「おかしいな」
と思ったのは、25日の朝方だった。目が覚めてパソコンの前に座り、マウスを握ったのだか、何となくいつもと感覚が違う。カーソルの位置が定まらないのだ。
「寝ぼけているのかな」
と思い、席を立ち顔を洗いに行った。洗面所の前に立つ。
「えっ?」
うまく蛇口が回せない。いや、回せるのは回せるのだが、右手が痺れている。
足は?何とか歩けるが、股関節のところにちょっと違和感がある。
「もしかしたら」
と思い、再びパソコンのマウスを握る。そして、今までの症状を打ち込んで検索してみた。結果は、「脳梗塞」だった。
ところが、結果を見ているうちに、だんだん痺れが取れてきた。
「考えすぎ?」
それから数時間、完全に痺れはなくなっていた。
さて、25日は休みだったが、当初何も予定はなかった。朝あるサイトで、食パンの専門店が近郊に出来たという情報を得た。そこで「行ってみようか」ということになり、嫁さんと買いに行くことにした。
ところが、車のドアを開けた時、また痺れがぶり返したのだ。とりあえず運転は出来たので、現地まで行き、嫁さんにパンを買いに行かせ、ぼくは休んでいることにしたのだか、駐車場が空いてない。散々探したあげく、ようやく空いている場所を見つけた。
車を止め、嫁さんをおろし、そこで寝ようかなと思い、何気なく後ろを見たら、なんとそこは脳神経外科だった。
「もしかしたら呼ばれているのかも」
と思い、嫁さんが帰ってくるのを待って、その病院の中に入った。
いろいろ症状を聞き、頭の検査をしたあと、医者が言った。
「〇〇病院に紹介状を書きますので、今からすぐに行ってください」
「えっ、入院するんですか?」
「そうです」
「何日くらいですか?」
「わかりません」
おいおい、仕事もあるのに、どうしたらいいんだ。そもそも長期入院などしたことないので、何を用意していいのかわからない。
「心の準備ができてないんで、来週からとかダメですか?」
「後遺症で不自由な生活をしていいんなら、かまいませんよ。とにかく、この病気は早く治療した方がいいんです」
「・・・」
「では、入院ということでいいですね?」
「はい」と、嫁さんが返事した。