詩風録
この間ある人が、「最近首とか肩とかが凝るんだけど、何でだろうと原因を探ったら、どうも低反発マットのせいみたいなんよ。あれ、合う人と合わん人がいるみたい」 と言っていた。おかげで寝起き感が悪く、酷い場合は頭がボーッとするという。 ぼくもけっこ…
十九歳の頃、龍の夢を見たことがある。庭に檜が植えてあったのだが、それが突然龍に変わり家の中に飛込んできた。ぼくは家の中に横たわる龍のうろこの何枚かをはぎ取って、食べたのだった。龍の夢を見るとすごくいいことがあると言われているが、それから数…
顔を洗ったあと タオルで顔を拭いたら 何かが唇に付着した。 何だろうと手にとってみると それはちぢれ毛だった。 シャツのボタンの位置が 昨日までとは違うではないか。 「えっ?」と動作が止まり 一、二分後、ようやく 裏返しだということに気づく。 六階…
朝目覚めるとぼくはこの機械に キーを入れてエンジンをかける。 機械はしばらく停滞してから 「よっこらしょ、よっこらしょ」 ゆっくりゆっくり動き出す。 この機械は1957年製だから 66年間使用していることになる。 たまに故障はあったものの 性能がよ…
ボーッとしている時 どうでもいいようなことを 思いつくことがある。 こぶとり爺さんのこぶをとったのは 鬼ではなくて、実は ドクターXだったのではないか、とか。 ボーッとしている時 どうでもいいようなことを 考えることがある。 通気性のないガラスの靴…
人間寝ることが大切だ。 疲れも取れるし、気力も湧いてくる。 とはいえ少しでも寝過ぎてしまうと 体は疲れるし、気力も湧いてこない。 さらにはデブになったりして 体のためにもよくはない。 かといって寝ないでいると 病気になったり、狂ったり 時には霊に…
その小さな胸を見せておくれ 女の子、かわいい その小さな胸をいつまでも 女の子、見せておくれ ぼくは海が好きなので 女の子、夏になったら さあ、水着なんかはよしにして 女の子、夏になったら 真っ白な、きみの声を ぼくはいつまでも聞いているよ 時が経…
夏休みの楽しみの一つに、病院通いがあった。別に大病をしていたわけではない。夏休みを利用して、歯や目や鼻など悪くなっているところを治療しましょう、というやつだ。 歯に関しては痛みを伴うので行くことは滅多になかったが、目や鼻の治療は痛みも伴わな…
五十歳になって変ったことは トイレで手を洗わないという 地球の環境に優しい生活から、 トイレの後に手を洗うという 環境破壊の生活になったこと。 ぼくの中で大きな変化だった。 環境破壊は今なお続いていて 後ろめたい気持ちで一杯です。 六十歳になって…
1,思い込み ぼくが会いたいと願っているあの人は きっとぼくに会いたくないと願っているのだ。 だからずっと会えないままになっている。 すぐそこにいるのに声すら聞けないということは きっとそういうことなんだろう。 だからぼくはそこに行かないでいる。…
それは頭のすぐ上を飛んでいる、 だけどぼくの手はそこに届かない それは小さく光る粒の隊列だ だけどぼくの目は見失ってしまう それは大きくもあり小さくもある、 だけどぼくの知能は理解できない 未開な生物であるぼくは それをどこまでも追いかけていく …
目の細かい網戸の中に 映る画像をぼくらは 現実だと思っている あの街もあの人も この街もこの人も みんなみんな 現実だと思っている だけどちがうんだな 電気がないと あの街もあの人も この街もこの人も やって来ないんだから
目が覚めて窓の外を見ると 嬉しくなるような日射しが 少し早い春を包んでいます とってもいい一日なんだと 甲高い声を張り上げて 公園の鳥が朝を歌っています 普段はうるさい建設現場の 鉄骨を組んでいる音でさえ 今朝はなぜか心地よいのです 外は暖かいのか…
売り出しの日のスーパーに行くと 駐車場所を探すのにひと苦労する。 原因を作っているのが軽自動車だ。 店側は軽自動車のため専用の枠を いくつも用意しているのに軽側は 普通車用の駐車枠に止めてしまう。 普通車は軽枠に止められないので ウロウロウロウロ…
四十代頃までは牛乳が好きで いつも口にしていたんだけど 五十代にさしかかった頃から おなかをこわすようになって 以来余り口にしてないのです。 基本的には牛乳の味が好きで 時々チャレンジはしてみるが おなかのゴロゴロが怖くなり 少し口に含んではやめ…
今日も黒いズボンをはき 黒いスニーカーをはいて 2キロ程の道のりを歩き 20分程で会社に着いた それから1時間程たって 用を足しにトイレに行く あっようやく気がついた ファスナーが開いていた 誰にも気づかれなかった ─────んだろうか?
休日の夕方、家の近くの川べりを歩いていた。 ぼくと同じように歩いている人も結構いた。 ところが、前を行く人、後ろから来る人、 すれ違う人、そのほとんどが、 犬の散歩、犬の散歩、犬の散歩だ。 さて、この辺は団地しかないのだが、 どこからやって来た…
川道を歩いていてふと思った。 バッタも雀も白サギもネコも ここに集う様々な動物たちは みんな前を向いて進んでいる。 いや動物たちだけではなくて ここの道沿いに咲く花だって この川を流れて行く水だって みんな前を向いて進んでいる。
ある人との会話の記憶をたどる時 さりげないひと言の中にその人が 人生を左右する程の大きな意味を 込めていたのに気づくことがある。 もしその時に意味を捉えていたら 違う道を歩んでいたかも知れない。
出会った頃から感じていたことだけど、 ぼくたちは恋愛とか友情とかではなく、 もっと心の深いところで繋がっている、 そういう気がしてならなかったのです。 あなたがあの人と付き合っていた時も、 あなたが結婚したのを伝え聞いた時も、 それゆえに容認で…
公園のセミが大合唱している。 今この時とばかり鳴いている。 その必死さが暑さを予感させ、 予感に心と身体が反応をして、 「暑い、暑い」を引き寄せる。 ならば耳を塞いでこの合唱を、 聞かなければいいだけの話で、 ついでに「暑い」と口にせず、 好きな…
行き過ぎた正義は人格を拒み 行き過ぎた正義は行動を拒み 行き過ぎた正義は思想を拒み 行き過ぎた正義は希望を拒み 行き過ぎた正義は家族を拒み 行き過ぎた正義は友情を拒み 行き過ぎた正義は社会を拒み 行き過ぎた正義は正義を拒む
スーパーに行った時に思うんだ 「もしかしたら、感染した人が ここに立ち寄ったかもしれない」と。 入口の消毒液を使う時に思うんだ 「もしかしたら、感染した人が キャップを触ったかもしれない」と。 ぼくらはコロナウイルスという 不気味な言葉に怯えてい…
痒くって、とにかく痒くって、目が覚めたんだ。 蚊がいるのかな、ダニにかまれたのかな。 いやいや、そんな痒みではない。 何か下腹がムズムズするような痒みだ。 一番の問題は、この痒みの原因ではない。 この痒みの質でもない。 一番の問題は、この痒みの…
「次の人生、初恋は小学1年の時だ。同じクラスの女の子に。キスしちゃうんだな。しかし、それが最初で最後、彼女は転校し、その後会うこともなくなり、おまえの初恋は儚く終わる。 高校1年の時に、ある女性と出会い、それからその人のことをずっと思い続け…
青空を遮断する灰色の雲が 笑顔で指揮棒を振っている さりげなく笑顔で近づいて 彼らに『愛』をうたわせる さりげなく風を吹かせては 彼らに『平和』を語らせる さりげなく雨を降らせては 彼らを『正義』に走らせる さりげなく青空を垣間見せ 彼らに『銃』を…
時代はスカスカ、今年もスカスカ 前世もスカスカ、来世もスカスカ 夢見はスカスカ、希望もスカスカ 理想もスカスカ、現実もスカスカ 都会はスカスカ、田舎もスカスカ 会社はスカスカ、仕事もスカスカ 学校はスカスカ、勉強もスカスカ お店はスカスカ、お客も…
こんな世の中だから 何があってもいいように 先に謝っておきます。 「申し訳ありません」 誰かのことを 『あなた』と言っただけで 傷つく人がいるかも知れません。 「申し訳ありません」 UFOの話をしたら、 『いい加減なことを言うな』 と憤る人がいるか…
近頃ネットで買うものは、 マスクの中敷き、除菌剤。 すべてコロナに絡んでる。 絡んでいるから夢がない。 夢がないから楽しめない。 その上すぐにとどかない。 とどかないから喜べない。 近頃ネットで買うものは、 マスクの中敷き、除菌剤。
やつらの弱点に気付いた人が トンネルを越えてやって来た。 その日からこの街は一変した。 至る所にはびこっていた塊が 心の中から消え去っていった。 街はまた動き出したのだった。