2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧
職場にいるアルバイトの女の子が、 この三月に大学を卒業した。 卒業式は「もちろん袴を履いて」参加したそうだ。 ぼくらが学生の頃はあまり見かけなかったが、 最近は袴が流行りなのだという。 ぼくが女性の袴姿を初めて見たのは、 小学校の卒業式の時だ。 …
少しでも早く家に帰って 少しでも長く風呂に入るのが、 ぼくの目下の楽しみだ。 長風呂といったって、 別に子どもの頃のように 船や潜水艦のプラモデルを持って 風呂に入るわけではない。 ただその日目にとまった本と たまにアイスクリームを持って入るだけ…
昔はなあ、 教科書に落書きをしただけで 放課後ビンタだった。 でもね、 ぼくたちはそれを苦にはしなかったんだ。 なぜなら先生から殴られることは 一つの勲章だったからだ。 もちろん親になんか言わなかった。 言えば男が廃れるからだ。 仮に言ったとしても…
基本は土を踏むのと何ら変わらないのですが、 それを踏んだとたん、 それまでの環境が一変してしまうものなのです。 そのことを見聞きした友だちからは馬鹿にされ、 あげくに好きなあの子に暴露され、 ついには変なあだ名をつけられるのではないか… といらぬ…
とある炭鉱の廃坑近くにある モルタル造りの小さな中学校に ぼくは通っていた。 学校の横には 山に続く細い道があり、 その山のふもとには火葬場があった。 二年生の校舎からは、 その火葬場の煙突が真正面に見え、 風の強い日には、 煙が教室の中に入ってく…
日本がWBCで優勝したのを見届けてから、 ぼくたち夫婦は買い物に行った。 ショッピングセンター横の遊園地から、 子どもたちの絶叫が聞こえてくる。 そうか、もう春休みなんだ。 駐車場から見える山の中腹は すでに桜色に染まっている。 今日は少し肌寒くあ…
今年初めてのモンキチョウが 渋滞中の車の間を縫っていく。 日差しをいっぱい浴びながら、 さも気持ちよさそうに、 悠々と春の中を泳いでいる。 モンキチョウ、 彼こそ春の目安なんだ。 毎年その日に季節が変わる。 三寒四温がそこで終わり、 誰もが冬の顔か…
月の作る影の中に虫が鳴く 虫の鳴く声はススキを揺らし ススキが揺れると声は止む 声なき夜のしじまの中に 小さな妖怪が潜んでは 時間とともに成長する 長い長い時間の中で 巨大に育った妖怪たちが じっとこちらを窺っている 今にも襲ってきそうな気配の中 …
休みの前の日は、 つい夜更かししてしまう。 早く寝れば休みを有効に使うことが出来るのに- と思いながら、もう何十年もやっている。 とはいえ最近は以前のように、 昼まで寝ているということはなくなった。 夜更かしはしているものの、 そこそこ早い時間に…
四十歳を超えた頃 ぼくの中に疲れがあるのに気がついた 肉体的なものなのか 精神的なものなのか それはわからなかったが 目を閉じれば疲れが浮いて見えるのだ それが気になってしかたない そのうちその疲れが別の疲れを呼んできて だんだん仕事も手につかく…
---
火事だ アパートの小さな窓口が たくましい火を吐きだしている 火はゴウゴウと声を張り上げ アルミの手すりを溶かしながら上昇していく 窓口はゴジラの肺活量よろしく 息切らすことなく火を吐き続ける このままいけばこのアパートは 十分も持たずに 焼け落ち…
---
ボブ・ディランは歌ってはいない 聴く人が歌っていると 勝手に思い込んでいるだけで 実は何も歌ってはいない 綿々と連なる言葉の塊を 荒削りな伴奏の中にただ 叩きつけたり浮かべたりしているだけで 実は何も歌ってはいない ボブ・ディランは歌ってはいない …
退屈さがしみてくると また悪魔たちがやってくる 昼夜かまわず生ぬるい風が 声を上げながら吹きすさぶ -いやいや将来が楽しみなお子さんですぁ これから渡る社会という荒波を前にして お子さんは動かずして戦略を練ってらっしゃる なかなかの大物じゃないで…
物書きになる夢というのが昔からあったですね。 それが小説家なのか、 エッセイストなのか、 はたまた詩人なのか、 そのへんはあまりはっきりしてなかったけど、 ライターという言葉にはかなり憧れました。 ある時期そういう会社にも所属していました。 ライ…
昼から夜にかけ鼻がムズムズして、しきりにクシャミが出る。 まさか花粉症? そんなことはない。 いや、そうは思いたくない。 昨年も一昨年もこういう症状が出た。 だが、傍がどう見ようと思おうと、ぼくは花粉症とは認めなかった。 もし認めてしまうと、本…
朝のことだ。 車で嫁さんを職場に送って行く途中、とある県立高校の前を通ったのだが、校門の前に正装をした先生らしき人が数人立っていた。 嫁さんに「この高校、何かやっているのか?」と聞くと、「今日は卒業式よ」と言う。 なるほど今日は3月1日か。 …