2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧
(朝) ・・・・パトカーに捕まった車が一台。 場所は国道脇の側道で、きっと 一時停止を怠ったのだろう。そこは 交通量の少ない短絡線が優先で その道と交差する、より交通量の多い 本線のほうが止まれになっている。 しかも横断歩道のせいで 『止まれ』標識の…
・・・・ ドブドブ、ドブドブ、ドブドブと 聞き慣れない音の雨が降る。 ブカブカ、ブカブカ、ブカブカと 聞き慣れない音が窓を打つ。 もはや意味のなくなったワイパーは 面倒くさそうに水の中を動いている。 窓の景色はゆがんでいるのか。 いやいや、雨でにじん…
今日は29日か。ということは あと三日で夏休みが終わるじゃないか。 そうかそうか、それはいいことだ。 毎日のように駐車場でサッカーしていたガキ! それが終わるのを待ってキャッチボールを始めたガキ! 木にとまっているセミに石を投げていたガキ! 団…
・・・とにかくよく歌う奴らだ。 現在ぼくたちを含めて 三組の客がいるのだが 他の二組がカウンターを占領し 競い合って歌っている。 元々『ママさんと本音で語る』 ということを主にしたような店で カラオケはたまにしかやってなかった。 ところが最近はカラオ…
ぼくはおかしなものを見た。 住職が読経している時 ぼくは考え事をしていた。 その時だ。 誰もいないはずのぼくの横に 何人かの人が座っているではないか。 家族や親戚ではない。 まったく知らない人たちだ。 皆グレーのスーツを着て 神妙にお経を聴いている…
実際は30日なのだが こちらの都合と坊さんの都合で 父の弔い上げを昨日行った。 今回が五十回忌だから あれから49年経ったわけか。 昭和36年8月30日未明 トントンと玄関を叩く音が聞こえた。 「こんな時間に何やろうか?」 と母が起き、玄関を開け…
エイトマンの歌詞の中に 『行こう無限の地平線』というのがある。 何のことはない歌詞だが、ぼくは長い間 この歌詞にこだわりを持ってきた。 リアルタイムでこのテレビまんがを 見ていた頃、ぼくはまだ保育園児で 新幹線と同じ速さで走るエイトマン、 タバコ…
16:45 ・・・事故か。上り車線の真ん中で 二台の軽が頭を突き合わせている。 あらら、二台ともボンネットが 開いているじゃないか。きっと 直進車と右折車がぶつかったんだろうな。 いったい誰が運転しているのだろう。 二台の車の運転席には、同じ色の 作業着…
あいつはそこにいるんだけど なかなかこちらに気づいてくれない。 お互い教室の中を 行ったり来たりしているんだけど なかなかこちらに気づいてくれない。 あいつはいつもの連中と歩いている。 その連中との談笑に忙しそうだ。 ぼくもいつもの連中と歩いてい…
この夜はあまりに暑い。 風がまったく吹かんのです。 汗は止まらん。体はベトつく。 すでに頭は冒されている。 しかたなく埃まみれのエアコンの 赤いスイッチに手をやった。今年二度目だ。 これで冒された頭から、体のベトつきから 止まらん汗から、ようやく…
・・・・ええ、言われましたよ。 何であんなに短くしたんだって。 時間はたっぷりあったんだし 一曲通しで歌うとか、もしくは もう一曲歌うとか出来たんじゃないかって。 ま、言うのは簡単ですけどね。 実際やっているほうはきつかった。 終盤だったので、けっこ…
前々から欲しかった、ちくま文庫版の 『つげ義春コレクション』を手に入れた。 一冊一冊は千円以下で そこまで高くはないのだが 全9巻揃えると、そこそこの額になる。 そのそこそこの額に縛られていたせいで これまで手を出せずにいたわけだ。 「どこかで吹…
十二支の丑を数字に置き換えると2になる。 十二進法だから、2の次にくる丑の数字は 12を足して14、次は26。 以下38、50…と続いていく。 何で丑の数字を持ち出したかというと ぼくが好きになる女性は 不思議と名前に丑の数字、つまり 姓名判断の…
中学生の頃だったな。 居間で昼寝をしていた時に 玄関の扉をトントンと叩く音がした。 誰だろうと思いながら 目を覚ましてみると、そこに ぼくの顔を覗き込んでいる人がいた。 胸に大きな名札をつけ モンペをはいた婆さんだった。 誰だか思い出せない。 とい…
1, 三日月ではない。かといって 半月ではない月が出ている。 あごのしゃくれた人の 二次元的な横顔のようで 乱視が入っているぼくには その人の目や鼻まで見えている。 十数年前に友人と深夜の ドライブを楽しんでいた時のことだ。 山道を走っていると、え…
二日前の朝のことだ。 その前日に嫁さんの実家から 肩身の狭い思いをしながらも ちゃっかりとせしめてきた ブルーベリーのタルトを食べていた。 最後の一口を食べている時だった。 なぜかガリッという感触があった。 飯の中に入っている石のような感触だ。 …
とろりん、とろりん 風がー吹けば とろりん、とろりん まぶたがー重い とろりん、とろりん 魔法がー効いて とろりん、とろりん まぶたがー重い とろりん、とろりん 今日もー嫁の とろりん、とろりん 実家でー無駄な とろりん、とろりん 時間をー消費し とろ…
このテーブルは相変わらず座りにくい。 あの鳩時計はずっと壊れたままだ。 今日も話題はパチンコか。 ご飯は一杯で充分だ。 なぜかそれ以上のおかわりができない。 トイレの場所がなぜか遠くに感じる。 テレビの音がいつも大きい。 またドロドロしたドラマが…
風の通らぬ仏間に、 線香と蒸れた果物のにおい 色とりどりの落雁 テーブルの上にならぶ、 瓶ビールと栓抜きと ビール会社のロゴ入りグラス 枝豆、ピーナツ、柿の種 肩幅の広い黒衣の坊主 分厚い経本と南無阿弥陀仏 足のしびれと扇風機 常に誰かがいる、お盆 …
この夏、気になっていることがある。 それは例年になく膨れているお腹だ。 夏着は暖色系しか持ってないので 腹回りが特に強調されてしまう。 寒色系のシャツにすれば目立たなくなるが 今さら買いに行く気にもならない。 気になっているのは見た目だけではな…
第一次オイルショックが起きたのは ぼくが高校一年の年の秋だった。 世の中が紙不足と言って突然騒ぎだした。 それを知って大変だなとは思ったが、別に お尻が拭けなくなったわけでもなかったから ぼくに紙不足の実感はなかった。 そういうさなか、ぼくは当…
高校時代に仲間内で 幻の名曲と呼んでいた歌が ひょんなことから手に入った。 何で幻だったかというと 実はその歌はある商品のCMソングで その商品を買わなければ そのレコードが手に入らなかったのだ。 その商品を買えばことは簡単なのだが 趣味嗜好品で…
1, 座ると床が熱を持ち 立つと耳に熱風を感じる。 暑い外気から逃れてきた身に この仕打ちはつらい。 汗が体中にまとわりついて 背中には痒みも感じている。 全開した窓からは一風も吹き込まず 真夏の熱を吸い込んだベランダと その熱に蒸された部屋の間に…
ぼくの家のそばにある港が 突如観光地になっている。 何でもそこの船泊の対岸にある 工場の景色が幻想的でいいらしく 新聞で取り上げられていたのだ。 市はそれを受けて そこを含むいくつかの場所を 観光スポットにしようと もくろんでいるようだ。 確かに何…
中学三年の夏休み 八月のちょうど今頃だったと思う。 親戚と近くの海に泳ぎに行ったんだけど その時クラゲに腕を刺されてね ひどく腫れ上がったことがあるんだ。 刺された時の痛みが尋常じゃなかったので 慌てて海から上がり そこに小便を引っかけたんだ。 …
氷のキャラキャラいう音に 心惹かれる日々であります。 キャラキャラいってるその中に 焼酎甲類ぶち込んで ジンジャーエールで軽く割り その黄金色はじける液体を 一気に口の中へと流し込む。 肴は旬の焼き茄子と カツオの出汁酢の冷や奴。 これが今年のこの…
犬は常に一人称で宣言する。 「我、主人の恩義に報わん」 彼らは滑舌が悪いので 人の耳には「ワン」と聞こえる。 猫は常に二人称で呼びかける。 「汝、何ゆえに我を構うや」 彼らはあまりに早口なので 人の耳には「ニャー」と聞こえる。 鴉は常に三人称で明…
ゆらゆらと風が吹くと ゆらゆらと風になりきって、 ころころと風鈴が鳴ると ころころと心を遊ばせて… 昔はそれでこの国の 不快な夏を乗り切っていた。 ところが、そういう 伝統的な処方に頼らずに 科学的な処方を頼るようになってから この国の病状は悪化し…
ビールを飲むと腹が膨れ 茶漬けを流すとさらに膨れ スイカを食べると限界になる。 毎年夏になるとこの繰り返しだ。 四十歳を過ぎた頃、この 腹のきつさに耐えられなくなり こういう食生活はやめようと 何度も心に誓ったが 意志の弱さから 何年経ってもやめら…
『君の街』を書いたのは 二十九年前の夏のお江戸だ。 行方知らずになっていた 一人の女性を思いながら 食うや食わずの生活を送っていた。 当然痩せてはいたけれど 夏バテすることはなかったし 猛暑日だって熱帯夜だって 扇風機ひとつでしのいでいた。 痩せた…