吹く風

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

2016-01-01から1年間の記事一覧

来世も一緒に

おそらく前世にした約束で 現世を生きているのだから 一緒に歩んでいるのだから 現世もまた約束しましょう 来世を生きていきましょう 一緒に歩んでいきましょう

転職した日の朝

馴染みのない整髪料のにおいが コーヒーのかおりにつつまれて 狭いこの部屋の中を漂っている。 基本的に好きじゃないにおいだ。 というか気分が悪くなる臭いだ。 ここで昼食をとれと言われたら きっと飯が喉を通らないだろう。 もしかしたら吐くかもしれない…

天井のマア坊

天井のマア坊の存在を知ったのは 今から半世紀以上前のことだった。 夜中何かの気配を感じ目が覚めた。 気配のする天井の方に目をやると そこに見慣れない顔が映っていた。 母の話だと彼はマア坊という名の ぼくの生涯の守り神なのだそうだ。 マア坊はなにを…

会釈の人

その人が何を求めているのか 充分すぎるほどわかっている。 だけどそれにこたえる人生を 歩もうなどと思ってはいない。 その時はいいかもしれなけど あとが色々と面倒で嫌なんだ。 相手が自分の価値を押しつけ ぼくを染めようとしてきても 噛み合わない話を…

鉄棒

頭の右上に長い鉄棒が見えている。 ぼくはそれをつかもうとしている。 鉄棒は常にそこに有るのではなく 何かの折に右上に降りてくるのだ。 だからぼくはその折を逃すまいと 常に右上に神経を集中させている。 さて右上の鉄棒をつかんだことで ぼくの人生がど…

1976年11月

40年前のこの時期のこと 浪人中だったぼくの生活は 昼夜が完全に逆転していて 昼間は布団の中に潜り込み 陽射しを受けて眠っていた。 目覚めは日が沈んでからで しばらくボーッとしたあと 机の前に座ってみるのだが 受験勉強などやる気もなく 落込んだ詩に…

恋愛心理

数年前の同窓会のことを 冷静になって考えていた。 彼女はぼくとしゃべる時、 目を合わせようとせずに なぜかオドオドしていた。 その後街で出会った時も やはり彼女はそうだった。 雑誌でたまたま見かけた 心理記事を読んでいたら 男と話す女のオドオドは …

幽体になって遊ぶ

真夜中いよいよ眠ろうとした時 パシっというラップ音が聞こえ 幽体の離脱が始まったのだった。 肉体から出たぼくは玄関に行き 扉を開けて外に出ようと試みた。 だけど幽体、もし見つかったら まずいかなと思い、覗き穴から 外を覗いてみた。さすが夜中だ 外…

なぜかクマゼミが鳴いている

もう10月に入っているのに なぜかクマゼミが鳴いている 既に秋蝉は終わっているのに ワシワシワシワシ鳴いている 台風の風を夏だと感じたのか 季節のとらえ方を変えたのか もしや地磁気が変動したのか なぜかクマゼミが鳴いている ワシワシワシワシ鳴いて…

秋を好きになれなかった

秋は楽しい夏休みを終わらせる 秋はぼくたちの自由を奪い取る 秋はぼくたちから海を遠ざける 秋はぼくたちから山を遠ざける 秋は半そでの生活を終わらせる 秋は長い二学期の大半を占める そして冷たく寒い冬を呼ぶんだ だから秋を好きになれなかった

頭の上に重く大きな塊が乗っている 塊には猛暑という名前がついている その重さに押されて汗が染出てくる 塊の中にはいろんな夏が入っている 声を発して塊の中を飛び回っている その声に刺激されて汗が染出てくる

もう一度会いたい人

後で初恋だと気づいたんだよ 7歳の頃のM江に会いたい 思春期の片想いは実に辛かった 14歳の頃のT実に会いたい この人生初の一目惚れだった 16歳の頃のI恵に会いたい 初めて憧れた年上の人だった 21歳の頃のO子に会いたい 実は結婚も考えていたん…

今日を前に進もう

何ごとも前に進むためには 前を向かなければならない ところが今日という一日は 後を向くことで美化される 前が後になってしまうんだ だから前に進めないんだよ

鼻の中

鼻の中が暑くて眠れないから エアコンのスイッチを入れた 就寝中の冷房の風をこれまで 頑なに拒んできたんだけれど この夏の暑さは尋常ではない このままいけば命にも関わる だから寝不足を避けるために 鼻の中の空気を冷やすのです。 現世の滞在を維持する…

盛夏

盛夏、早朝の公園で 無数のお父さんたちが 必死に自分を主張する 時折お母さんの声もする

畑のお地蔵さん

農家の人たちが寝静まった頃 お地蔵さんたちがやってきて 緑色の大きな玉や小さな玉に せっせと黒い線を書いていく 「この玉の中は赤いんだって 「甘い汁が詰まっているって 「そろそろ腹も減ってきたな 「一つ割って食べてみようか 「よせよせ修行中なんだ…

1974年のLP盤

このアルバムを聴くと当時の店の 大音量のBGMと派手な装飾物と そこでレコード盤を買う昂ぶりと 下腹からくるモゾモゾ感と喜びと 針を落とす時の緊張感とプチ音と 一曲目が始まる前のパチパチ音と レーベルに描かれた妙なマークと レコードスプレーのにお…

真夜中のマンション

今更ながら思う。ぼくの体の 数メートル数十メートル上で 数メートル数十メートル下で 数メートル数十メートル左で 数メートル数十メートル右で 顔もよく知らない赤の他人が ゴロゴロと寝ているのである。

1983年7月、突然の現実

まさかあの日あそこで彼女に会えるとは 思ってもいなかったもんだから、ぼくは 本当にびっくりして焦ってしまったんだ。 彼女に会ったら絶対にこの想いを告げて 思春期からの胸のつかえを取り除こうと いつもいつもぼくは思っていたんだけど、 実際に会った…

諸事情さん

私の背中の後ろには 諸事情がはびこって 密かに人生狂わせる 私の頭の少し上には 諸事情が浮んでいて いつも事を荒立てる 私の左膝の皿の上に 諸事情が居すわって 中々立ち上がれない 私の肩の右上辺りに 諸事情が乗っていて 彼らに賛同できない 私の後ろの…

今日の夏は疲れます。

雲を脱ぎ捨てた太陽が 体を焦がしにくるので 今日の夏は疲れます。 不快指数を上げる風が 肌にまとわりつくので 今日の夏は疲れます。 頭から流れる汗の粒が 角膜を覆って痛いので 今日の夏は疲れます。 街に漂う焼肉の臭いが 鼻の中にはびこるので 今日の夏…

トンボ系の家出

トンボ系の家出しとったんよ トンボ系の家出しとったんよ カゴのすき間から抜け出して スイスイスイスイ飛び回って 今回どこまで行ったんだっけ 地名も何にも覚えてないけど 何日もかけて、羽を動かして かなり遠くまで行ったんよね 疲れて枝に止ってた時だ…

空から眺めて生きている

いつも空を見上げて生きてきたけど 来る日も来る日も雨が気になったり カミナリを怖れたりして切りがなく 人生は苦しいものと決めつけていた。 ある曇った日に空を見上げていると なぜか意識が浮いていくのを感じた。 意識は雲を突き抜けてのぼっていき とう…

正夢になる告白

ある時代に行われる同窓会での話。 以前見たことのある曇り空の下を 既に中年化しているぼくと彼女が 校庭内を寄らず離れず歩いていた。 左側の少し前を歩いている彼女に ぼくは緊張も照れもなく言うのだ。 「高校の頃からずっと好きだった」 数十年続いたぼ…

いろいろな夏

私この地球でいろいろな夏を 手がけている者でありまして この仕事を始めてからすでに 数十億年は経ったと思います。 人間のみなさんは私のことを 神様と呼んでいるようですが そんな畏れ多い存在ではなく 公園で落ち葉などを集めては 焚き火しているおじさ…

随分先の時代の話

今から随分先の時代の話だ。 人間から敵対視されていた ゴキブリは身を守るために 人間が好むピンク色に体を 進化させることに成功した。 さらに彼らは秋の虫の如く 鳴くようになったのだった。 その頃我々人類はというと 長年の文明の蓄積で今より 遙かに長…

梅雨を前にして

もしも雨が外で降っているのなら 雨が家の中に降り込まないように 窓を閉じているだけでいいのです。 雨が外で降っているからといって 雨にまつわる思い出などを甦らせ 心をそこに遊ばせてはなりません。 所詮は湿気った記憶なのですから カビの塊のような物…

忘れられた幽霊

そう、あの影はぼくの中で ぼおっと映っているだけの 忘れられた幽霊なんだから、 何にもこわがることはない。 そう、あの影はぼくの中で 暴れるようなまねはしない 既に死んだ意識なんだから、 無理に除霊する必要もない。 そう、あの影はぼくの中を ただう…

最近は影を見たことがないのです。 自分の影を見た記憶がないのです。 影が現れないわけではありません。 影はちゃんとぼくに寄添っていて、 ぼくが動くとおりに動いています。 なのにぼくに影が見えない理由は、 あまりに影が当り前すぎるために 影に心が転…

三年後に去った友人

中学に入学した頃に、自転車で 友人と遠出をしたことがあった。 行きたい場所があるという彼と 学校で待ち合せて出かけたのだ。 確か連休前の日曜だったと思う。 毎日のように買い食いしている 学校近くの駄菓子屋がその日は 閉まっていた。家の近くにある …