「いったい長崎に何しに行くんね?」
「飛び込みです。長崎で飛び込める所、知りませんか?」
「知らんけど、その日なら海沿い走ってたら、波のほうから飛び込んできてくれるよ」
「そうなんですか」
「スリルあるよ」
「いいですねえ」
「でも、そうなったら、あんたとは二度と会えんやろうね」
「えっ、どういう意味ですか?」
「その日があんたの命日ということ」
と言って、ぼくは合掌した。いったい、P君は台風のことどういうものと思っているのだろうか。まさかイベントか何かと勘違いしているのではなかろうか。
ま、いいや。P君の連休明けである9日に、P君が来るかどうか、楽しみになってきた。
昨日P君は、いろんな人に長崎行きを言ったらしく、「おまえはバカか」などと意見されていた。
それを見てぼくは聞いてみた。
「長崎行き、どうするんね?」
「行こうかどうしようか迷ってます」
「あんた男やろ」
「えっ?」
「男は何ごともチャレンジやろ」
「行けということですか」
「あんたが、行きたいと言ったんやないね」
「まあ、そうですけど」
「行きたいんやろ?」
「ええ」
「じゃあ、行ってみたらいいやん。痛い思いをして、男は成長するんやけね。もし死んだら線香上げに行ってやるけ」
数時間後、P君がぼくに聞いてきた。
「7日の夜8時に出るならいいですか?」
「あんたがそれでいいと思うなら、そうすればいいやん。何ごともチャレンジやけね。でも8時に出たら、着くの8日の朝になるよ」
「いや、高速使うから、もっと早く着くと思います」
「あんた、その日高速が使えると思っとるんね?」
「えっ、使えないんですか?ETCカードならありますよ」
・・・・・だめだこりゃ。