高校時代に仲間内で
幻の名曲と呼んでいた歌が
ひょんなことから手に入った。
何で幻だったかというと
実はその歌はある商品のCMソングで
その商品を買わなければ
そのレコードが手に入らなかったのだ。
その商品を買えばことは簡単なのだが
趣味嗜好品でしかも相当高価だったので
かなりの金持ちじゃないと買えない。
レコードが手に入らないなら
ラジオの音楽番組にリクエストするしかない。
ということで、何度かリクエストしてみたが
非売レコードで、しかもCMの曲を
かけてくれる番組なんてなかった。
結局われわれ庶民はCMでその歌の
さわりを聞くことしかできなかった。
当然誰もがその歌のさわりしか知らず
それゆえにその歌は幻化してしまった-
というわけだ。
とはいえ楽譜は出ていたので
楽譜さえ読むことが出来れば
サビがどうだとかくらいは
一目するだけでわかっただろう。が
なにぶんぼくの仲間は音楽の授業に
不真面目な人間で構成されていたため
楽譜を読める者は一人もいなかったし
仮に読めたとしても、そこには
伴奏もなく、曲全体のイメージが
見えないから面白くない。
そうなるとどうにかしてその歌を
手に入れようとするのが人情で
その頃からぼくは、無意識のうちに
「いつかこの歌を手に入れてやる」
と思っていたのだった。
念じ続けて36年か…。
諦めさえしなければ
夢というものは叶うんだ。