小学生の頃、
野球を見に行くと、
決まってコーラを注文していた。
特にコーラが好きだったのではない。
アルバイトの兄ちゃんの
コーラの注ぎ方がかっこよく、
それが見たかったからだ。
片手で栓を抜いて、
素早く紙コップをかぶせて、
そのままビンを逆さまにすると、
コーラが下のほうから湧いてくる。
その一連の作業を素早くやってのける
兄ちゃんたちがまぶしくてまぶしくて、
まるで魔術師のように思えたものだ。
あれから数十年経った今
球場でコーラを頼むと、
缶から紙コップに地味に注ぐだけで、
かっこよさの欠片もない。
そういえば最近、
ビンのコーラを見かけなくなった。
そこにはいろんな理由もあるのだろうけど、
実はかつてコーラを片手で
かっこよく注いでいた兄ちゃんたちが、
還暦を迎える年になったから
…かもしれないな。