ある風の強い日の夜中、
寝苦しくなって目が覚めた。
それからなかなか寝付かれなくて、
しばらくすると胸騒ぎまでしてきた。
その時だった。
『ピーン、ポーン』
間延びした呼び鈴の音がした。
いつもと違ってもの悲しい音だ。
聞き違いかなと思っていると、またしても、
『ピーン、ポーン』
その音に嫁さんも目を覚ました。
「誰?こんな時間に」
「おれちょっと見てくる」
玄関まで行き、覗き穴から外を見た。
誰もいない。
静かに扉を開けてみた。
やはり、誰もいない。
「誰もおらんぞ」
「えっ?じゃあ、何で鳴るの?」
「知らん。こちらが聞きたい」
「幽霊とか?」
「まさか・・」
もしかしたら、実家の母に何かあったかも。
と、朝一番に電話した。が、元気そうだ。
念のために聞いてみた。
「夜中ここに来てないよねえ?」
「何で夜中に行かなならんとね」
「うちに行く夢とかも見てないよね?」
「見てない」
母ではなさそうだ。
では何だったんだろう。
やはり幽霊なんだろうか。
後日わかったのだが、強い風にあおられた時に
インターホンが反応することがあるのだそうだ。
幽霊とかじゃなくてよかった、という話だが、
それを知って以来、風の強い夜中には
決まって鳴るようになった。
『ピーン、ポーン』