「満天の夜、満天の星、満天の愛」
聞いたことのないジャズっぽい歌を
バスの中の運転手が突然歌いだす。
「満天の夜、満天の星、満天の愛」
マイクが入っているのも気づかずに
運転手は気持ちよく歌っている。
「満天の夜、満天の星、満天の愛」
いったい何が起きたのだろうと
バスの中の客はざわついている。
「満天の夜、満天の星、満天の愛」
そのうちざわつきもおさまって
バスの中は運転手の声で満ちてくる。
「満天の夜、満天の星、満天の愛」
客は文句も言わずに聴いている。
その歌声に少しは照れてもいる。
「満天の夜、満天の星、満天の愛」
バスの中の運転手が歌い終わると
バスの中の客はまばらに拍手をする。