その十年くらい前に彼はこう言った。
『何ものもぼくを変えることは出来ない』と。
仕事で川沿いの道を
車で移動している時だった。
ラジオから臨時ニュースが流れた。
「ジョン・レノンが撃たれました」と。
車を運転していた人は思わずブレーキを踏んだ。
助手席のぼくは思わず「えっ!?」と叫んだ。
後部座席に乗っていた若い人たちはぼくたちに
「何があったんですか?」と聞いてきた。
その時ぼくたちは言葉を失っていた。
その後「撃たれた」という情報は
「死んだ」という情報に変わった。
ラジオは追悼番組に切り替えられた。
彼を知るすべての人の世界は変えられた。
その十年くらい前に彼はこう言った。
『何ものもぼくを変えることは出来ない』と。