毎年この時期になると
いつも同じ香りがする。
酸味が笑っているような
というか輝いているような
そんな香りがする。
この季節を象徴する
とても良い香りではあるが
長い間ぼくはこの香りを良い香りだと
素直に受け入れられないでいた。
それはぼくが生まれてからずっと
化学工場の近くに住んでいるためで、
どんな香りがしても、まず
「その工場から発している香り」
だと疑いを抱いてしまうのだ。
しかもその香りが良ければ良いほど
「毒ガスの香りかも知れん」
とまで思うようになっている。
そう思うようになってから鼻は微妙に
その香りに反応するようになり
気がつけばアレルギー的なクシャミが
時折出るようになった。
その香りがキンモクセイの香りだと
知ったのはけっこう年を取ってからで、
それ以来この香りに関しての
アレルギーなクシャミから解放された。
つまり妄想の中の毒ガスからは
解放されたということになる。