吹く風

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

女子の夢

二十代中頃のことだった。

高校時代の同級生女子を

街で見かけたことがある。

ずいぶん久しぶりだったので

声をかけようかと思ったのだが

その時見知らぬ男がツカツカと

彼女に近寄っていくのが見えた。

二人は笑顔で言葉を交わしたあと

すぐさまべったりとくっついて

腕を組んで歩き出した。



彼女の顔を見ると、ぼくの歌を

聞いた時にも見せたことのないような

それはそれは幸せそうな笑顔だった。

それを見て、ぼくは一気に

声をかける気が失せてしまった。

彼女の結婚を聞いたのは

それからしばらくしてからだった。



ぼくが高校生の頃、女子の持つ夢は

結婚というのが圧倒的に多かった。

ということで、その女子も

圧倒的に多かった夢を実現したのだ。



さて、夢は叶うまでが楽しいと聞いているし

いったん叶ってしまうと目標を失ってしまい

虚脱状態に陥ることが多いと聞いているが

彼女の場合、そのへんはどうだったのだろう。

ぼくが目にしたとおりで、

結婚までは実に楽しかったに違いない。

さて結婚という夢が叶った。

それからの膨大な時間を、果たして

彼女は虚脱状態で生きたのだろうか。



ま、結婚したての頃は恋愛の延長で

彼に溺れていただろうし、その後は

例えば子育てや夫の転勤といった

現実的な問題を抱えてしまうから

なかなか虚脱状態には陥る暇もなかっただろう。

もし陥るとしたら、子供が独立し、

夫の問題が一段落した後だ。

ということは、ちょうど今になる。



もしあなたがそういう状況にあるのなら

ぼくはまだ同じ場所に住んでいるので

連絡して下さいな。

時間を取って、作りたての歌を

じっくりと聞かせてあげますから。