吹く風

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

三丁目のロックンローラー

本物のフェンダーストラトキャスター

マーシャルのチューブアンプが欲しかった。

これさえ持っていればプロだと彼は思っていた。

とはいうものの、彼はギターリストになんか

なろうとは思っていなかった。

ジミー・ペイジリッチー・ブラックモア

テクニックにはとてもついて行けなかったのだから。

やるならパフォーマンスだけで充分だ。

というので、彼は形にこだわった。



本物のフェンダーストラトキャスター

マーシャルのチューブアンプが欲しかった。

これさえ持っていればプロだと彼は思っていた。

どうにかしてそれを手に入れようと

バイトバイトに明け暮れる毎日を彼は送っていた。

ところがなぜか髪型やファッションにお金をつぎ込んだ。

しゃべり方もロックンローラー風なキザなものになり

いつしか『三丁目のロックンローラー』と、彼は

皮肉を込めて呼ばれるようにはなった。だけど

肝心のフェンダーストラトやマーシャルアンプは

いつまで経っても手に入らなかった。



本物のフェンダーストラトキャスター

マーシャルのチューブアンプが欲しかった。

これさえ持っていればプロだと彼は思っていた。

いつかは夢が叶うと思って頑張ってはいたが

結局どちらも手に入れることなく

彼は普通の会社に就職した。

面接時の履歴書の写真を見せてもらったが

そこには普通の髪型をして普通のスーツを着込んだ

彼がいた。その格好が気に入らなかったのか

何かふてくされているようにも見えた。

ただ目だけは妙にギラギラと輝いていて

「心はロックンローラーだぜ、ベイビー」

と叫んでいた。バーカ。