カラコロという音がすると
縁側で寝ている猫が
首をもたげて「ニャー」と鳴く。
「何でこの猫は
下駄の音に反応するんだ?」
「それは幼い頃に
下駄で尻尾を踏まれたからだよ」
「なるほど。それでこの猫の
尻尾の先は曲がっているんだ」
「あー、触っちゃダメだよ」
「何で?もう痛みなんて
とっくに引いているはずだろ」
「そうじゃない。この猫は今でも
尻尾のことで恨みを持っているんだ」
「えっ。恨みって、猫が?」
「そうだ。だから尻尾を触られると
下駄に踏まれた昔を思い出して
恨みを晴らそうとするんだ」
「まさか取り憑くわけじゃないだろうな」
「そのまさかだ。こいつももう高齢だ。
もし取り憑いたら大変なことになるぞ。
そっとしておけ、そっと…」
外からは相変わらず
カラコロと下駄の音がする。
縁側の猫は相変わらず
首をもたげて「ニャー」と鳴く。