小学生の頃にアングラという言葉が流行っていた。
当時のぼくはこの言葉の意味を知らなかった。
まあ、それについての関心がなかったので
知ろうとしなかっただけのことだ。
その言葉の意味を知るのは数年後のことで、
第二期フォークブームが到来した頃だった。
たまたま遊びに行った叔父の家で
浅川マキのアルバムを見つけ、
その時初めて彼女の歌を聴いた。
実は長い間浅川マキのことを
カルメン・マキの別名だと思っていたので、
そのアルバムを見つけた時に
『時には母のない子のように』を聴いてみようと、
そのタイトルを探してみた。
だけどない。
そこで解説を読んでみると、
まったく違う人だということがわかった。
アングラの意味もその時に知った。
吉田拓郎や井上陽水などに傾倒していた
当時のぼくには、
彼女の歌は気だるく感じた。
『赤い橋』に到った時には、
憂鬱な気分にもなった。
そしてその気だるさと憂鬱さが、
そのままアングラのイメージとなった。
今でもアングラという言葉を聞くと、
そのイメージが広がってくる。
三日前、その浅川マキが死去した。
きっと赤い橋を渡って行ったのだろうな。
もう帰らない。