学生の頃、何度も遅刻していたから、
人のことをとやかくは言えないが、
会社勤めをしていた頃の
部下の遅刻には往生しましたわい。
別に悪意を持って遅刻しているのではない。
ちょっと変わった女子ではあるが、
遅刻が悪いことはわかっているし、
根が素直なので、
注意すれば翌日は遅刻せずにやってくる。
とはいえ、やってくる時間がとてつもなく早い。
九時半に来ればいいのに、
何と七時半だ。
おかしいなと思って聞いてみた。
「家から会社まで何時間かかるんか?」
「一時間くらい」
「じゃあ九時半に会社に着くには、
何時に家を出たらいいかわかるやろ?」
「うん、六時半」
間違ってはいない。だけど常識ではない。
この問答で、ぼくはあることがわかった。
彼女は算数が苦手だったのだ。
つまり計算問題が解けないのだ。
そこで「渋滞することも頭に入れて、
八時くらいに家を出たほうがいいんじゃないか?」
とアドバイスをした。
何で八時なのかはわからなかったようだが、
彼女は素直にそれを聞き入れた。
それで何とか九時半出社の遅刻は減った。
ところが早朝会議の時だとか、
時差出勤の時はまたしても遅刻するのだ。
理由は同じで算数が苦手だからだ。
つまり応用問題が解けないのだ。
おそらく彼女は一生遅刻するだろう。
それがわかったぼくは
もう何も言いたくなかったが、
立場上言わなくてはならない。
ということで、遅刻してない日に
「その調子だ。頑張れ」と言うことにした。
だが、そう言うと翌日必ず彼女は遅刻した。
その理由がふるっていた。
「頑張れと言われたので、頑張って寝た」
つまり頑張りすぎて寝過ごしたのだ。