何かちょっと違うな。
体罰なら一発二発で終わるはずだ。
ところがこの技術科の教師、
こちらが抵抗しないのをいいことに
手加減無しのビンタ二十発だ。
このビンタ二十発の原因というのが、
授業中のおしゃべりだ。
小学校の時もおしゃべりで
ビンタを張られたことはある。
だけど大概は一発止まりだった。
体罰ならそれで充分なのだ。
ビンタ二十発、
小学校出たての中学一年生にとって、
常識外の数値だ。
というか暴力だろう、これは。
「もうしませんから、許して下さい」
横で友だちが泣きながら言っている。
教師は赤い顔をしてぼくを睨み、
「おまえはどうなんだ?」と聞く。
ビンタ二十発も張られるようなことはやってない、
ぼくにはそういう自覚があるから、
意地でも謝りたくない。
とはいえ、友だちが怯えきっていて、
もう限界なのだ。
ぼくが謝らないかぎり、この惨劇は続くだろう。
渋々ぼくは「もうしません」と言う。
「次やったら、これだけではすまさんぞ」
教師の目は血走っている。
腫れ上がった顔を洗いながらぼくは思う。
奴はきっと、
ぼくたちをしかるつもりなんて毛頭なく、
最初からビンタ二十発張るつもりでいたんだ。
だからわざわざ人目のつかない保健室裏に
ぼくたちを呼び出したわけだ。
ほてった頬がさらに熱くなる。
ぼくの教師不信はこの時から始まった。
「こいつといるとろくなことはない」と思ったのか、
それ以降友だちはぼくを避けるようになった。
そしていつしか転校していった。