突然果物の腐ったような臭いがした。
墓参りに行く車の中でのことだ。
てっきり母が腐りかけの果物を
持ってきているとばかり思っていた。
ところがお供物を見てみると、
酒とビールとジュースとおはぎで、
果物なんてどこにもない。
墓参りから帰る時も引き続き
車の中はその臭いがしている。
果物でないとすると何の臭いだ?
やはり臭いは母の座っている辺りからする。
そのへんをくまなく調べてみると、
足下に土くれや枯れた草が落ちている。
これかと思い嗅いでみると、
これだった。
濃いタンパク質の臭いがする。
犬か何かのウンチだろう。
母がどこかで踏んで、
気づかずに車に乗ってきたのだ。
果物の腐った臭いがしたのは、
車内熱で発酵でもしていたのだろう。
それが何かがわかってしまうと
俄然臭くなるものだ。
おまけにみんなの服には、
線香の臭いも染みこんでいる。
ウンチと線香が織りなす、
微妙な香りのハーモニー。
雨がそぼ降る彼岸の夕べ、
ぼくは窓全開で車を走らせた。