いくら流行っているからとはいえ、
背中とか肩とか太ももとかに
タトゥーを入れた人が歩いていると
えらく浮いて見えるものだ。
本人はそれでいいんだろうけど、
周りはみな距離を置いている。
さらにぼくのような旧人類が見ると、
「モンモン」などという言葉を思い出し、
それが若い女性だったとしても、
ついつい身構えてしまう。
ところが慣れとは怖ろしいもので、
最近は頻繁にそういう人を
見かけるようになったせいか、
心に余裕が出来てきて
身構えながらもその人に
毒のひとつも吐きたくなる。
「今だから見られるけど、
ばばあになったら醜くなるぞ」
しわくちゃばばあのタトゥーなんて、
とても見られたもんじゃない。
当然温泉はお断りだし、
銭湯だって利用できないから、
老人会にも参加できない。
相変わらず周りは距離を置く。
つまりあの人たちは、
タトゥーを入れたその日から、
消せない過去を背負っているのだ。