「大丈夫」
この言葉を拾ったのは、
三十歳になるかならないかの頃だった。
些細なことで罪悪感に苛まれ、
数ヶ月立ち直れなくなったことがある。
心は黒く重い雲に覆われて、
ふさぎ込む日々が続いた。
魔物か何かに取り憑かれてでもいるのか、
この人生をあきらめようかとさえ考えたこともある。
そういう時だった。
ある日そんなぼくを見かねた運命が、
すべては大丈夫なんだと、
ことあるごとにこの言葉をぼくに投げかけてきたのだ。
最初は見過ごしていたぼくも、
ようやくそのことに気づき、
素直にこの言葉を受け取った。
おかげで何とかその状態から抜けだすことができたのだった。
「大丈夫」
そうだった。
あの時運命は、
ぼくの人生に太鼓判を押してくれたのだった。
今さら何をぼくは悩んでいるのだろう。