この古い家の主は昨日から、
胃けいれんを起こして七転八倒している。
ぼくはこれをチャンスだと思い、
家移りを考えることにした。
家主の大騒ぎが静まるのを待って、
そっと家を抜け出してやるんだ。
笑ってすませられるような家じゃなかったんだから、
黙ってここを去ったって別に気にすることもない。
住まいといえばここしかないような気がしていたけど、
それが間違いだったようだ。
きっと今まで夢を見ていたんだ。
そう、錯覚していたんだよ。
寂しさだってあったんだよ。
ここでは友だちも出来ない苦痛もあってね。
時々ここに住んでいて怖ろしくもなったし。
ま、いいや、それもあと少しのことなんだから。