吹く風

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

古いノートにハマっています。

【本を読んでいて、君のことを思い出した。
一昨年の大晦日、いや、昨年の元日に君と別れてから、もう2年が経とうとしている。
ぼくは今もなお、大ボラを吹いて生きている。
日に日に冷たくなる東京の風を身に受けるのが嫌で、一刻も早く福岡に帰りたいと思っている。】

今日も古いノートを引っ張り出して読んでいる。
汚い字で読みづらいのだが、読んでみるとけっこうこれが面白い。

【高校を卒業してからの、あの2年間の空白は何だったのか?、
それは『生きる』ということだった。
そのことがわかって、ぼくは急に東京に出たくなった。
生きているという実感を、親元を離れて味わいたかったのだ。
・・・・・。
出発の日、ぼくは7時に起き出して、朝飯もそこそこに、逃げるようにして家を飛び出した。
まったく、その日の寒かったこと。
冷たい風に追われるような気がして、ぼくは足早に駅に向かった。
汽車に乗った時、ホッとしたのと同時に、なぜか敗者の感がぬぐえないでいた。
考えてみたら、福岡がだめだったから東京に、という感じがする。】

なるほど、東京に出た時はそんな気持ちになっていたのか。
希望を持って上京したと記憶していたが、実際はこうだったのだ。

その当時の生活や、忘れていた出来事などの発見もある。
東京にいた頃、2週間を2千円で過ごしたことがある。
バイトはしていたものの、収入よりも支出のほうが多く、経済が破綻したのである。
その時の状況も書いている。

【・・・、気がつくと手元には2千円しか残ってないのだ。
そのため、ぼくは苦手な計画を立てた。
風呂は週に一度だけ、タバコはもらいタバコ、2日に一度は昼飯抜き。
本当に空腹というものは辛いものだった。

その頃、同じ境遇の者が集まって、『昼飯抜きもらいタバコ同盟』みたいなものができていた。
一日の割当金を寄せ合って、60円のコーヒーを飲み、人にパンを恵んでもらっていた。
しかし、他の連中は、ぼくより幾分恵まれていた。
なぜなら、彼らは朝飯を食うことが出来たからだ。】

本当に情けない日々を送っていたものである。
この時は何とか乗り切っているが、その後もこういう状態に陥ることがたびたびあった。

【・・・、結局ぼくにとっての東京とは、敗者の行き着いた所に過ぎない。
夢もない。
希望もない。
人間もいない。
ただ、街があるだけ。
時々、新宿に行くと寂しくなることがある。
空は晴れていても、友だちがいても、本当に泣き出したくなることがある。
同じ世代の若者と、ビルとビルの狭間ですれ違う。
その顔には、ぼくと同じくらいの歴史がある
彼らも、彼らなりに、彼らの人生において寂しいのだ。
ディスコやゲームセンターで大はしゃぎしても、彼らの心の中には冷たいすきま風が吹いているのだと思う。
泣きたいのだ。
何かわけのわからない矛盾したものに、涙したいのだ。
それは、酒を飲んでも充たされるものではない。
踊り狂っても、女を抱いても、決して充たされるない。

最近、旅に出たいと思っている。
それで、その何かが充たされるとは思ってはない。
しかし、そこには何かがあるような気がする。
その寂しさは紛れないにしろ、また違った寂しさを味わうのも悪くはないだろう。

このまま、すんなり就職なんかしたくない。
今を充たされぬまま、先を求めるようなまねは、絶対にしたくない。】

アホか!。
きっと一人で、何もすることがなかったから、こんなことばかり考えていたのだろう。
とは言え、ぼくはこの言葉通り、福岡に帰ってきても、すぐには就職はしなかった。
しかし、それは充たされないものを探していたわけではなく、就職がなかったからであるが。