今日は飲み会である。
今の店に移ってから、初めて早帰りをさせてもらった。
しかし、土曜日とはいえ、夕方の渋滞はひどいものだった。
普段20分もあれば、家に帰り着くのだが、今日は倍以上の50分もかかってしまった。
実際これがあるから、早帰りはしたくないのだ。
初めてとはいえ、これまでも何回か早帰りをするチャンスはあった。
「しんちゃん、今日早よ帰り」
と、何度か声をかけられたことはあるが、ぼくはそのつど断った。
理由は先に書いたとおり、夕方の渋滞が嫌いだからである。
例えば、8時に仕事をあがったとしよう。
この場合だとすでに夕方の渋滞が終わっているから、8時20分には家に着くことになる。
では、7時に帰った時はどうなるか。
今日のペースだと家に帰り着くのは、7時50分ということになる。
1時間早く帰っても、家に着くのは30分しか変わらない。
この時間のロスが、ぼくは嫌なのである。
と、ここまで書いて、ぼくは飲みに行った。
場所は焼き鳥屋だった。
ビールを特大ジョッキで1杯飲んで、それから焼酎のお湯割を5杯ほど飲んだ。
考えてみたら、その間、ウィンナー1串とうずらの玉子5串しか食べてない。
こういう飲み方をすると、翌日頭がガンガンするのはわかっている。
しかし、30年近くこの飲み方できているので、そう簡単に習慣を変えることは出来ない。
案の定、これを書いている今(27日になっている)、頭がガンガンしている。
1次会が終わったのは、11時を回っていた。
ここで一人が抜けた。
「明日仕事なので」ということだった。
しかし、同じく翌日が仕事の、ぼくは抜けない。
いつものノリで、次の飲み屋に行った。
ここで抜けていたら、今の頭ガンガン状態も、少しは緩和されていただろう。
2次会は、場末の小さなスナックだった。
ばあさんが一人でやっている。
お客は2人いたのだが、すでに1人は眠ってしまっている。
もう1人は暇をもてあまして、何度もぼくたちのほうを伺っていた。
いつもようにカラオケが入り、いつものように「しんた、歌え」が始まった。
あまり気乗りしなかったのだが、とりあえずリクエストに応えて拓郎の歌をうたった。
うたい終わると、暇をもてあました1人がぼくのところにやってきた。
60代半ばの男性だった。
「いい歌ですなあ。誰の歌ですか?」
「はあ、吉田拓郎です」
「ほう、拓郎がこんな歌をうたっていたとは知らなかった」
そして彼は「この歌知ってますか?」と言って、うたい始めた。
けっこう古い歌だった。
歌の題名は知らないが、どこかで聞いたことのある歌だった。
『どこで聞いたんだろう』と思っているうちに、歌は終わった。