吹く風

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

年末

気がつけばもう年末という季節に入っている。
昆虫の話をしていたのが、つい昨日のことのように感じる。
さして変わりのない一年だった。
変わったことといえば、HPを立ち上げ、毎日日記に苦しんでいることくらいだ。
そのせいで、「しんたの健康神話」が崩れつつあることも否めない。
幸い病院のお世話になることからは逃れているが、いつ病院に飛び込んでもおかしくない状況にあるのは確かだ。
ここに来ておかしくなった鼻は、まだ治らないでいる。
小鼻の出来物はとうとうかさぶたになり、その状態がもう1週間続いている。
鏡で見ると本当に間抜け顔だ。
おそらくは前歯が一本抜けた間抜け顔と同等だろう。

さて、年末といえば、いろいろなお客がやってくる時期でもある。
この間も日記に書いたが、変なクレームをつけてくるおっさんなどは、そのいい例であろう。
今日も現れました。その手のお客が。
夕方のこと、突然盗難防止の警報が鳴り出した。
従業員は慌てて現場に駆けつけるのであるが、ぼくが駆けつけた時は、まだ女子従業員が一人いただけで、犯人を捜している最中だった。
周りには2,3人の中学生がいたので、「こいつらか?」と思い、まだ盗難品についている警報アラームの音のありかを探した。
しかし、音の出所は、この子達ではなかった。
そのそばに、体格のいい50代の男性がいた。
ぼくがその男に目を向けると、その男は慌てるでもなく、別の店に入っていこうとした。
ぼくはその後ろにべったりとついて、音の確認をしているところに、他の男性従業員Iさんがやってきた。
そしてIさんが、「音が鳴ってますねえ。ポケットの中の物を出してもらえませんか?」と言うと、その男は方向を変え、2階に上がろうとした。
Iさんがその男の腕をつかみ「出して下さい」と言うと、男は手を振り払いながら「時間がない」などと言い出した。
ぼくはその男の後ろにぴったりくっつき、逃げ出せないようにガードしていたのだが、Iさんの手を振り払った時の男の力がかなり強かったので、『これは一戦交えんといかんかなあ』などと思い、少し身構えた。
するとその男は、「ここでは何だから、事務所に行こう」と従業員みたいなことを言い出した。
Iさんが腕をつかんだまま事務所に連れて行ったのだが、暴力を振るうかもしれないと思い、ぼくはそのまま男の後ろにくっついていた。

事務所に入ると男は、商品を取り出した。
口臭チェックの機械だった。
店長が「これを盗ったんですか?」と言うと、男は「この商品は学生から預かったものだ」と言った。
Iさんが「あの中学生ですか?」と聞くと、「いや、その学生はおれにこれを預けると、外に逃げて行った」と言った。
明らかに嘘だった。
仮に学生から預かったとしても、ポケットの中に入っていること自体がおかしい。
店長とIさんが残り、ぼくは売場に戻った。
売場に出ると、さっきの中学生がいた。
そこでぼくは「ぼくたち、さっきの人知っとる?」と聞いてみた。
中学生は「いえ知りません。ぼくたちは目撃者です」と言った。

結局、警察を呼んだらしい。
あとで店長がぼくのところに来て、「あの男、元暴力団の組員で、前科十何犯らしいよ」と言った。
どおりで力が強いはずだ。
もし戦っていたらどうなっていたことか。
警察の人が男に、「お前、他に何も持ってないやろうの」と凶器の確認をしたらしい。
男は何も持っていなかったらしいが、あの手の人はそのへんの物を凶器にすることぐらいわけない。
ぼくがいくら柔道をやっていたといっても、柔道は組む格闘技である。
相手が凶器を持った時に通用するかどうかはわからない。
勝つにしろ、少しは痛い目を味あわなければならなかっただろう。
そんなことを考えている時だった。
店長が、真剣な顔をして言った。
「しんちゃん、命は大切にせんと」
ぼくの心を読んでいたのだろうか?
年末はまだまだ続く。