1,
取引先に間の悪い人がいる。その人は、決まってぼくが食事に行く直前にやってくるのだ。こちらは早く食事に行きたいのに、彼のおかげでなかなか行くことが出来ない。
しかたなく、彼の来る日は時間をずらそうと思い、1時間ほど食事の時間を遅らせたことがある。ところが、そういう日に限って、彼も1時間ほど遅れてやってくるのだ。
「あんた、おれに飯を食わさんために来よるんね」とつい嫌味を言ってしまう。
「いや、そういうつもりじゃないんですけど…」と彼は頭を掻きながら言う。
が、次の週も、彼は決まってぼくの食事の直前にやってくるのだ。
2,
休憩時間中に、何人かでお菓子を分けて食べるとする。そういう時、決まって呼ばれもしないのにやってくる人がいる。その人が入ってきた時、ぼくたちは「あっちゃー」という顔をして、お互いの顔を見合わせる。まあ、別にその人にお菓子を分けてやる義理もないのだが、結局、一人だけ何もないのもかわいそうだから、ということでその人にお菓子を分けてやることになる。
ちなみに、そういう人に限って、図々しい人が多い。「悪いねえ」とは言いながらも、決して遠慮はしないものである。
その人が去ったあと、ぼくたちは、いつも「あの人、いつもいいところで顔だすねえ」とか「鼻が利くんやろうねえ」などと、小悪口を言い合っている。一方でその人は、「ラッキー!!」とか「タイミングがよかった」とか思っていることだろう。
3,
『間の悪い人』は、裏返せば『タイミングのいい人』なのである。
先の取引先の人も、もしぼくが食事に行っている時に来たとしたら、ぼくが帰るまで待つか、出直さなければならない。ということは、ぼくにとって間の悪い時間であったにしろ、彼の中ではタイミングがよかったわけである。
そういえば、ぼくはいつも間を外した生き方をしていると思っている。先の論法でいくと、そういう人は、他人にとっては「間がいい人」ということになる。
そのせいだろうか、いつも損ばかりしているような気がする。