吹く風

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

不思議な話

 何年か前の話。
 ある人と話をしていた時、彼が、
「前に〇〇という話をしましたよねえ」と言った。
「いや、してないよ」とぼくが答えると、
「いや、何日か前にちゃんと話しましたよ」と言う。
「何日か前っていつ?」
「いつかはっきり覚えてないけど、この話をしたのは確かに、しんたさんでしたよ」
「どんな話をしたんかねえ?」とぼくが聞く。と、彼は事細かに話し始めた。

 やっぱりそういう話、ぼくは聞いてないので、
「やっぱり聞いてないよ」と言うと、彼は、
「いーや話しましたよ」と言う。
 しばらく「した」「しない」の押し問答が続いたが、ふとぼくに思い当たることがあった。
「あ、そうだった。したした」
「ほら、ちゃんと話したでしょう?」
「うん。ちゃんと話聞いた」
「話したのいつでしたかねえ?」
「今」
「えっ?」

「あんたこれから、あんたの言う何日か前にタイムスリップするんやろ?」
「しないですよ。というか出来ない」
「いーや、する。間違いなくする。そしてそのまま何日かを過ごし今に到り、○○の話をする。そうしたら、あんたは何日か前に言った覚えがある。自分は今初めて聞いた。ね、これでつじつまが合うやないね」
「そんなの無茶苦茶じゃないですか」
「いいや、無茶苦茶じゃない。あんた本当は『ちょっと未来人』なんやろ?」

 ぼくは本当に、その話を聞いてなかったのだ。