吹く風

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

秋の夜長問答

1,
聞き手:10代と20代で一番変わったことは何ですか?
しんた:人の目を気にしなくなったことですね。10代の頃は、何か自分が特別な人のような気がしていたんですね。ところが、20代に社会に出てみて、そうではないことがわかった。何でわかったかというと、周りの人がみな「自分は特別だ」と思っていたからです(笑い)。
「なーんだ。みんな特別だと思っているのか。ということは、おれは特別じゃないやん」
 そういうことがわかってから、急に人の目が気にならなくなった、というより気にする必要がなくなった、というわけです。

2,
聞き手:20代と30代ではどうですか?
しんた:そうですねえ。人目を気にしだしたことじゃないですか。
聞き手:えっ!?20代で人目が気にならなくなったって言ったじゃないですか。
しんた:ええ、言いましたよ。
聞き手:どういうことでしょうか?
しんた:20代の頃に人目が気にならなくなったというのは、自分の能力に対してでした。でも、人間それだけじゃないでしょ。そう、肉体的なものもあるんです。
 ぼくは20代後半から白髪が増えだしたんです。最初はそれほど気にならなかったんですが、ある時横の方に白髪の固まりを見つけましてね、それから人目が気になりだしたんです。
聞き手:なるほど。
しんた:サイドの白髪というのは悲惨ですよ。実におっさん臭く見えてしまう。特に床屋に行った後がひどかった。白髪というのは髪を切ると目立つんですね。もう髪の毛のほとんどが白髪じゃないのか、と思ったくらいです。しかも髪を切ると白髪ばかり立ってしまうんです。

聞き手:しかし、薄くなったわけじゃないのですから、そこまで気にしなくてもよかったのでは?
しんた:そう思うでしょ?それが違うんですよ。人はハゲも白髪も、同じく老化現象として捉えている。何度も心ない人から「白髪じじい」なんて呼ばれましたよ。自分より年上の人から、「おっさん」などと呼ばれたり…。

聞き手:何か白髪対策はされたのでしょうか?
しんた:はい、やりました。何とかならないものかと、いろいろ努力をしました。きな粉ドリンクがいいと聞けば、きな粉ドリンクを飲む。塩で頭を洗ったらいいと聞けば、塩で頭を洗う。アロエがいいと聞けば、アロエを頭に塗りたくる。が、結局どうにもなりませんでした。
 そこで最後の手段『白髪染め』に走ったんです。ところが、それがまた人目を気にする原因になりましてね。どうも人の目が自分の頭を見ているような気がして、染めた直後であれば「染め残しがあったんじゃないか」とか、髪が伸びてくれば「根元の白さが目立ってきたんじゃないか」とか思ったりしてね。まったく気の休まる暇がなかったですよ。

3,
聞き手:では、30代と40代で変わったことと言えば?
しんた:人目を気にしなくなったことです。
聞き手:・・・、また戻ったんですか?
しんた:ええ。
聞き手:今度はどうされたんですか?
しんた:白髪が気にならなくなったんです。
聞き手:ほう。
しんた:結局、最終的には染めるのをやめたんです。
聞き手:それはどうして?
しんた:皮膚をやられましてねえ。かさぶたが出来て、ひどい時はそこから出血までする。また、染めてから2週間もたつと白髪が目立ってくるわけですが、染めてない頃は前と横だけにしかなかった白髪が、頭全体に広がっている。「これはいかん」と思いやめたわけです。
 やめてしまうということは、白髪を受け入れるということですから、その覚悟が必要になる。覚悟が出来てしまうと、もう白髪のことなんて気にならない。白髪が気にならなくなったので、自ずと人の目も気にならなくなった、ということです。

聞き手:今日は眠たい中、どうもありがとうございました。