2002年4月22日の日記です。
1,
前の店にいた頃のことだ。
ぼくの部門は2階にあった。そこには1階から上がってくるエスカレーターがあったのだが、そこを子供たちが駆け下りるのだ。
ほとんど毎日のことだった。おそらく、親は下で買い物をしているのだろう。
もしこれで事故でもあった場合は、当然のように店が責任を問われる。怪我でもされたら、賠償金ものである。
しかし、問題はそういうことではない。怪我をして一番困るのは、怪我をした子供本人なのだ。それを教えるのが、大人の務めである。そう思ったぼくは、駆け下りる子供を見つけるたびに注意していた。
最初は
「そこで遊んだら危ないよ」
と言っていたが、そんな優しい言い方をしても子供たちは聞かない。
「だって、ここ下りのエスカレーターがないやん」
と言うのだ。生意気である。
そこで、ぼくは怒鳴ることにした。
「こらー、どこを駆け下りよるんか!!」
「ここで遊んだら、死ぬぞ!!」
効果覿面だった。駆け下りていた子も、途中で下りることをやめ、2階まで上がってくる。そして、すごすごと階段を下りていくのだ。
また別の子が同じことをやっている。そこでまた怒鳴り上げる。その繰り返しだった。
親がいても関係ない。注意しないほうが悪いのだ。ぼくは、どんどん怒鳴ってやった。
2,
ある時、小学校の社会見学で、団体の小学生が2階に上がってきたことがある。
先生がいるから大丈夫だろうと安心していたのだが、子供たちは相変わらず駆け下りをやっている。
そういう場合、ぼくは先生が注意するものと思っていた。しかし、先生は何も言わない。ただヘラヘラと笑っているだけだ。
カッとしたぼくは、いつも以上に声を張り上げ、
「こらー、そこで遊ぶな!!」と怒鳴った。
その時、先生が言った言葉に、ぼくは呆れてしまった。
「ははは、ほーら怒られたやろうが」
だった。
『あんたは引率者だろう。何をノー天気なことを言ってるんだ。怪我をされて困るのは、自分たちじゃないか!』
ぼくは、この言葉がのどまで出かかったが、言うのをやめた。こんな奴らに何を言ってもだめだ、と思ったからである。
3,
今日、うちのパートさんから胸のすく話を聞いた。
そのパートさんがバスに乗った時のこと。バスの中で、子供が騒いでいたらしい。
その子の母親は、周囲への建前からか、
「運転手さんに叱られるから、静かにしなさい」
と注意した。
すると、それを聞いた運転手さんは、マイクを通して
「叱るのは親の仕事でしょ」
と言ったという。
周りにいたお客さんは、それを聞いて拍手したらしい。
母親は、真っ赤な顔をしていたという。
4,
店で子供が騒いでいたりすると、母親やばあさんがこちらを見て、
「ほら、静かにしないと、おじちゃんに叱られるよぉ」
などと言っている。
よくよく考えてみると、おじちゃんが悪者になっているのだ。
悪者逃れをしている悪者は、あんたたちでしょうが!