―もうずいぶん前から
この街は息をしてない
駅前には大きなビルが
いくつも並んでいて
ちょっと見は都会だ。
だけど人影はまばらで
独りよがりなオブジェを
見ているような気になる。
―もうずいぶん前から
この街は息をしてない
駅前がまだ平屋だった頃は
この街をひっきりなしに
走っていたチンチン電車が
深呼吸でもするかのように
多くの人を吐き出しては
多くの人を吸い込んでいた。
―もうずいぶん前から
この街は息をしてない
とはいえ年号で見ると
それは遠い昔の話ではなく
どちらかというと最近の話だ。
空はくすんでいたけど
この街は虹を描いていた。
それが街の誇りでもあった。
―もうずいぶん前から
この街は息をしてない