昔はよく車で遠出をしていた。日帰り宮崎だとか、日帰り鹿児島だとか、北九州からだと日帰りがきつそうな場所にも、けっこう足を伸ばしていた。
中でも好きだったのが阿蘇へのドライブで、雄大な風景を目にすると、心が洗われる思いがしたものだ。
黒川だとか湯布院だとか、帰りに立ち寄る温泉も格別によかった。
さて、そういうドライブをする際、曲がりくねった細い山道なんかを走ったりすることがよくあるのだが、そこで一番困るのが後続車の運転マナーだ。
こちらとしては初めての道だから、慎重に運転している。ところが後ろに地元の車だとか、道慣れたトラックなんかがつくと、その慎重さを許してくれない。
相手は慣れているからがんがん飛ばしている。極力よけてやってはいるのだが、何せ曲がりくねった細い道のこと、そのタイミングが実に難しい。
その間ずっとベタ付けされているのだ。もし動物なんかが飛び出してきて、急ブレーキをかけたら確実に追突される。
そのくらいに引っ付いているのだ。もうこうなると煽りというより暴力だ。
そう思うと頭に来たが、事故には到ったことはない。せっかくドライブを楽しんでいるのに、その最中に事故なんかに遭うと、
いい思い出が吹っ飛んで、嫌な思い出が残ってしまうからだ。
この大馬鹿どもが追い越せる場所まで、とにかく我慢していた。
おそらくこのベタ付け野郎は、その間
「このへたくそが!」
などと思っていたかもしれない。ぼくもその間、相手のことを
「車間も取れないへたくそが!」
と思いながら運転していたのだから。