高三の夏休みの終わりに、『いつまでも続く階段』を作った後、けっこう多くの曲を作ったのだが、これといったものが出来なかった。
曲だけではなく、肝心の詩の方がダメだった。その原因になったのが押韻だ。これはボブ・ディランの影響だった。ディランの詩は韻を踏んだものばかりで、それを彼は気持ちよく歌っていた。ぼくはそれをいいものだと思い、真似たのだった。だが、それがいかんかった。言葉遊びに明け暮れてしまい、内容のない詩しか書けなくなってしまったのだ。
そういう状態から脱出したのは、12月の寒い日にこの歌を作ってからだった。
『ネズミ通り15番地』
部屋の灯りが消える
おれたちの世界が始まる
小さな穴から抜け出して
大きな箱を横切って
台所の街に急ぐんだ
寝坊したらおしまいだ
もうご馳走は残ってない
今日一日は飯抜きだ
ここはおれたちの天国
誰にも邪魔されない
ネズミ通り15番地
ところでメリーはおれの生きがい
みんなが彼女を狙っている
彼女の家は戸棚の向こう
犬の遠吠えが激しくなると
そろそろメリーのお出ましだ
みんな彼女のご機嫌を取る
ここはおれたちの天国
誰にも邪魔されない
ネズミ通り15番地
本当は誰もメリーを愛してないんだ
ただ彼女と一発やりたいだけ
でも、おれの愛は本物だ
ここはおれたちの天国
誰にも邪魔されない
ネズミ通り15番地
→ ♫ネズミ通り15番地
この歌を作ってから、しばらくの間ガンガン歌っていた。それはある事情があったからで、そのことが解決してからは、あまり歌わなくなった。出だしで、苦しそうに声を張り上げているのがその証拠で、あまり歌ってきてないから、声が出なかったのだ。