頑張る40代!

いろんなことに悩む暇があったら、さっさとネタにしてしまおう!

酔っ払いブギ

はなむけ

前に触れておいたが、例の酔っ払いのおいちゃんはやはり死んでいたらしい。
死因は凍死だったという。
内心肝臓をやられて死んだと思っていただけに、肩すかしを食らった感じである。
やはり酒飲みは酒飲みらしく、最後は肝硬変か肝臓ガンで花を飾ってもらいたかった。

しかし散々人に迷惑をかけておいて、何の挨拶もないというのは失礼だろう。
迷惑をかけた人すべてに、一言わびを入れて死ぬべきではないのか。
ぼくも寝小便の後始末を何度もやってやったのだ。
幽霊でも何でもいいから、手みやげ提げて、一言わびに来い!



酔っ払いのおいちゃん(おそらく最終回)

この春の転勤で、今の勤務地を離れることになるのだが、その前に一度書いておきたい人物がいる。
それは、この日記をつけ始めた頃に頻繁に登場していた、酔っ払いのおいちゃんである。
一昨年の12月29日を最後に、おいちゃんはこの日記に登場してない。

まあ、その日の日記を読めばわかることだが、その前日においちゃんはゴミ収集所に火を付けて逮捕されている。
だから今は刑務所にいるのかというと、そうではないらしい。
それから1,2ヶ月して、おいちゃんはひょっこりと店に現れたとのことだった。
珍しくしらふで、色つやのいい肌をしていたという。
だが、一回だけだった。
その後、街中を自転車に乗って大声を張り上げながら駆け抜けて行ったとか、川べりで大の字になって寝ていたとかいう何人かの目撃談を聞いたのだが、店には現れていない。

ということで、ぼくはおいちゃんのことを忘れかけていた。
ところが、おいちゃんの記憶というのは、そう易々と消えるるものではない。
今年の正月に起きた、下関駅の火事のニュースを見た時のこと。
ぼくは反射的に一昨年の火事のことを思い出し、「もしかして、火を付けたのはあのおいちゃんじゃないか?」と思ったのだった。
だが、犯人の名前はおいちゃんの名前ではなかった。
さすがのおいちゃんも、そこまで行動範囲は広くないということだ。

さて、それからしばらくして、あるパートさんからおいちゃんの最新情報を聞いた。
その情報とは、「おいちゃんが死んだ」だった。
「えっ、死んだと?」
「うん、そうらしいよ」
「この冬は寒かったけ、凍死でもしたんかねえ?」
「さあ?」
それを聞いて、「これでこの町は平和になる」と安堵感を覚えると同時に、一抹の寂しさを感じたものだ。

ところが、今日また新たな情報が入った。
おいちゃんは相変わらず自転車に乗って、大声出して走っていたというものだった。
まさか、幽霊が自転車に乗って走っていたわけではないだろう。
いったいどっちが本当のことなんだろうか?

まあ、とにかく、今の店に移ってきてから、最初は酔っ払いのおいちゃんに、最後はそのおいちゃんの影に振り回されたことになる。
「結局、あのおいちゃんが、この町の思い出になるのか…」
そう思うと、複雑な気持ちになる。



酔っぱらいのおいちゃん、ついに逮捕される

例のごとく、今日の日記は『上京前夜(2)』となるはずだった。
が、ちょっとおもしろいニュースが入ってきたので、今日はそちらのほうを書くことにする。

“「ごみに火を付け逮捕」
27日午後11時20分ごろ、戸畑区夜宮3のごみ集積所から出火し、男が前に座っているのを発見した通行人が110番。
駆けつけた署員が住所不定、無職、H.T容疑者(65)を集積所の案内看板を焼損させた器物損壊容疑で現行犯逮捕した。H容疑者は酒に酔っており、容疑を認めているという。(戸畑署調べ)”
(12月29日付毎日新聞朝刊より)

このH.T容疑者、新聞に載るのは二度目である。
最初に記事になったのは、

“「雨の日のVIP」
雨がシトシトと降る夜は、戸畑署員の不安の日だ。60歳くらいの男性が決まってやって来て、当直員を困らせるからだ。
署員によると男性は日雇い労働者らしい。
だが、最近は仕事がなく戸畑の街を自転車に乗り夜の寝床を探しているという。戸畑署に現れると酔っ払った上に死んだふりをして居座る。そして保護室で朝を迎える。彼にとっては警察署が格好のホテルとなる。
実は、男性は根気が必要な山芋掘りの名人。金が尽きると山で長さ1メートルはある自生の山芋を掘り、料亭と1本1万円で取引する。
「どこか彼の働く場所はないのかな。山芋を掘る根気で頑張ってくれれば」と、署の幹部は雨雲を恨めしそうに見上げている。”
 (2002年6月26日付毎日新聞朝刊より)

ぼくの日記を長く読んでくれている人なら、ピンとくるだろう。
そう、このH.T容疑者とは、ぼくの日記に頻繁に出てくる、『酔っ払いのおいちゃん』のことである。
そして、冒頭の記事は、「酔っ払いおいちゃん、ついに逮捕される」の記事である。
最近とんと顔を見せないと思っていたら、こういうところで活躍していたのだ。
しかし、この日記に登場するのは、どのくらいぶりになるだろうか。
調べてみると今年の2月8日と9日に『酔っぱらいブギ』というタイトルで書いていた。
そこには、うちの男子従業員から外に放り出された、と書いている。
おそらく、それがおいちゃんに関する日記で、一番最近のものだろう。

それはそうと、知らない人がこの記事を見たら、おいちゃんは放火犯だと思うかもしれない。
が、このおいちゃん、そんな大それた犯罪を犯すほどの根性は持っていない。
おいちゃんのことを知る者は、おそらく、「昨日の夜は寒かったので、たまたま居合わせたところでたき火をやったのだろう」と思うことだろう。

もしくは、「おいちゃん一流のパフォーマンスかもしれない」と思うかもしれない。
年末から正月にかけて寒くなるという情報を、どこからで小耳に挟み、「寒くなるんか。じゃあ、警察にでも泊めてもらうか」と思い、何かやってやろうと思ったのかもしれない。
しかし、警察も年末で忙しい。
前回のように「死んだふりをして居座」っても、相手にしてくれないだろう。
そこで、寒さを紛らわせることも考えて、火を付けたのかもしれない。
そしてそれは、逮捕という形で成功したのだ。
これでおいちゃんは、寒い年末年始を、暖かい留置所で過ごせるだろう。

もし、警察が、本当においちゃんに罰を下すつもりなら、さっさと釈放すればいいのだ。
それが、今のおいちゃんには一番効き目があるだろうからだ。



酔っぱらいブギ(下)

幸い、日が照っていて、それほど寒くはなかったので、「風邪を引くことはないだろう」と思い、いくら起こしても起きないおいちゃんを、しばらくそこに放っておくことにした。

それからしばらくしてから、またおいちゃんの叫ぶ声が、店内から聞こえた。
そこに行ってみると、おいちゃんは店長とやり合っていた。
「出て行ってくれ!」
「何で、出らないけんとか。おれはお客さんぞ」
「人に迷惑かけるような人は、お客さんじゃない!」
そう言って、店長はおいちゃんを引っ張り出そうとした。
しかし、おいちゃんは抵抗する。

おいちゃん、歳はとっていても、毎日芋掘りで鍛えているから、力だけはある。
到底一人の力では、おいちゃんをつまみ出せそうにないので、周りにいたぼくたち従業員が、おいちゃんの手や足を取り、そのまま持ち上げて外に運び出した。
誰かが「放り投げれ」と言った。
それを聞いたおいちゃんは、「投げるな!」と言った。
また誰かが、「このへんにしようか」と言うと、おいちゃんは「いいか、そおっと置け、そおっと」とぼくたちに指示をした。。
酔っぱらってはいるものの、わりと冷静である。
おいちゃんを、そのまま外に置いて、ぼくたちは店の中に入った。

店内に入ると、清掃のおばちゃんたちがブツブツ言っていた。
「どうしたと?」と聴くと、「あのおいちゃん、おしっこをまりかぶっとるんよ(注;おしっこを漏らした、という九州弁。おしっこをしかぶった、とも言う)」と言う。
またである。
昨年も、おいちゃんはこの時期に、店の入口の中で立ち小便をしたり、寝小便をして、ぼくたち従業員を泣かせているのだ。
おいちゃんが来るということは、おいちゃんとの格闘以外にも、おしっことの闘いも覚悟しておかなければならない。

ところでおいちゃんだが、その後むっくりと起き出し、また店内に入ってきた。
何度追い出されても意に介せず、舞い戻ってくるのだ。
まさにゴキブリのようなしぶとさである。



酔っぱらいブギ(上)

「何か、こらぁ!」
今年もまた、この声が帰ってきた。
酔っぱらいおいちゃんである。
店の改装後、しばらく姿を見せなかったが、寒くなってまた舞い戻ってきた。
あいかわらず、どこで拾ったかわからない自転車に乗ってやって来、隣のスーパーで酒を買い、適当に出来上がったところで大声を上げ騒ぎ出す。

昨日、酔った勢いで、繋いであった犬にちょっかいをかけ、手を噛みつかれたらしい。
その犬の飼い主にさんざん文句を言って、慰謝料1000円を巻き上げたという。
また、銀行のキャッシュディスペンサーで、お金をおろしている女の人に、「こらぁ、いくら出すんか!?」などと凄んでいたという。
結局、店の人間とすったもんだの末、警察に通報されご用となった。

今日も昼からやってきて、大声を上げていた。
ぼくが遠巻きに見ていると、おいちゃんはぼくの姿を見つけ、「おう、大将。昨日も来たんだけど、あんたいつ来ても休みですなあ。わたしゃ、あんたに用があってですなあ…」と言う。
聞けば、携帯テレビの調子が悪いということだった。
おいちゃんは、ぼくが電気売場の人間だということを知っているので、ぼくに逆らうとテレビやラジオの修理などで便宜を図ってもらえないと思ってか、ぼくの前では大人しくしている。
だが、声は大きい。

このままだと、また人に迷惑がかかると思ったぼくは、「おいちゃん、おれ、トイレに行く途中っちゃね。歩きながら話そうや」と言って、外のトイレに向かって歩き出した。
すると、おいちゃんもぼくに付いてくる。
まんまと外に連れだして、「おいちゃんの話はわかったけど、現物を持って来な、どういう状態かわからんやん。今からとっておいで」と、ぼくは言った。
「いや、今日は持って来れんですけ、別の日に持ってきます」
「じゃあ、おれ、トイレに入るけね。おいちゃんも、外は寒いんやけ、早く家に帰り」
そう言って、ぼくはトイレに行く振りをし、別の入口から店内に入った。

しばらくして、外を見てみると、何とおいちゃんは玄関の前で寝ているではないか。
何人かの人が、おいちゃんを見ている。
ぼくは、おいちゃんの寝ているところに行き、「おいちゃん、起きんね。風邪引くよ」とおいちゃんを揺さぶった。
ところがおいちゃんは、起きる気配がまったくない。
それを見ていたお客さんが、ぼくに「酔っぱらってるんですか?」と聴いた。
「ええ、いつもこうなんですよ。深酔いするとあたり構わず寝て、中途半端に酔いが冷めると騒ぎ出す。困ったもんですよ」
それを聴いて、お客さんは笑い出したが、起こすのを手伝ってはくれなかった。



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