ようやく計算の出来たぼくは、
「150万です」と言った。
「嘘をつけ。伝票がないやないか!」
「伝票ですか、ちょっと待って下さい」
そう言って、ぼくはクレジットの受付に行った。
その時、背後から店長の「こら、逃げるな」という声が聞こえた。
その言葉を聞いて、ついにぼくの堪忍袋の緒が切れた。
ぼくはクレジットの受付で、自分の売った分のクレジット伝票を素早く拾い出し、それを店長のいるところに持って行った。
そして、それを店長の目のいるカウンターの上にバシッとたたきつけた。
「150万ですっ!!」
ぼくは店長をにらみつけて、大声で言った。
その時ぼくは、自分の形相が変っているのを自覚した。
その形相とは、怒りそのものだった。
それまで店長に対して我慢に我慢を重ねていた感情が、一気に表に出たのだ。
それを見た店長は、ひるんで黙り込んでしまった。
店長が何も言わないので、ぼくは畳みかけるように言った。
「ちゃんと調べて下さい。150万円売ってます」
店長は、まともにぼくを見ることが出来なかった。
「150万…」と小声で言いながら、周りをキョロキョロしだした。
目は完全に宙に浮いている。
きっと、そのあとの言葉を探していたのだろう。
そして、ようやく出た言葉が、
「150万くらいでいい気になるな」だった。
しかし、先ほどのような威勢の良さはなく、声は震えていた。
「誰がいい気になっとるんですか!?」
「…もういい」
小さな声でそう言うと、店長は戻っていった。
ことあるごとにぼくに悪態をついていた店長は、それ以来ぼくを見るとこそこそと逃げていくようになった。
映像キャンペーン、残り1ヶ月になった頃の話である。
話は変るが、2年前に『退職前夜』(2002年9月27日~10月2日)というタイトルの日記を書いたことがある。
その日記にも、ぼくと、その時期の店長とのバトルを書いているが、だいたい今回の店長と同じ展開になっている。
最初、店長から言いたいことを言われるのだが、ぼくはじっと我慢して、いよいよ最後になって、その鬱憤が爆発するというパターンである。
どちらの店長も似たタイプの人間だった。
人前で格好をつけたがり、強がるタイプだ。
大声で人を罵倒するだけならともかく、酷い時には相手を叩いたりもする。
『退職前夜』時の店長などは、腹を手術して退院してきたばかりの人間に、「気に入らん」という理由で、その腹めがけてパンチを入れたことがあった。
聞くところによると、彼らは就職して以来、これと言ってつまずくこともなく順調にその地位まで昇ったということだった。
そのために慢心してしまい、相手の気持ちなんかこれっぽっちも考えられない人間になってしまったのだろう。
そういう人間は、得てして強く見えるものである。
だが、実際はそうではない。
彼らはあまり人からの攻撃を受けたことがない。
またその慢心から、自分に攻撃するような人間はいないと思っている。
だから、そういう風に強気に振る舞うのだ。
そういう人がもし攻撃を受けたらどうなるか。
そう、前述の通り、手も足も出なくなるのだ。
特に今回のぼくのような、それまで守勢に回っていた人間から突然攻撃を受けたのだから、そこに精神的なショックも加わる。
ぼくを見るとこそこそと逃げるようになったのも、そのせいである。
今回のことで、ぼくはそのことを学んだ。
そして、退職時にそれを生かしたのだった。
「150万です」と言った。
「嘘をつけ。伝票がないやないか!」
「伝票ですか、ちょっと待って下さい」
そう言って、ぼくはクレジットの受付に行った。
その時、背後から店長の「こら、逃げるな」という声が聞こえた。
その言葉を聞いて、ついにぼくの堪忍袋の緒が切れた。
ぼくはクレジットの受付で、自分の売った分のクレジット伝票を素早く拾い出し、それを店長のいるところに持って行った。
そして、それを店長の目のいるカウンターの上にバシッとたたきつけた。
「150万ですっ!!」
ぼくは店長をにらみつけて、大声で言った。
その時ぼくは、自分の形相が変っているのを自覚した。
その形相とは、怒りそのものだった。
それまで店長に対して我慢に我慢を重ねていた感情が、一気に表に出たのだ。
それを見た店長は、ひるんで黙り込んでしまった。
店長が何も言わないので、ぼくは畳みかけるように言った。
「ちゃんと調べて下さい。150万円売ってます」
店長は、まともにぼくを見ることが出来なかった。
「150万…」と小声で言いながら、周りをキョロキョロしだした。
目は完全に宙に浮いている。
きっと、そのあとの言葉を探していたのだろう。
そして、ようやく出た言葉が、
「150万くらいでいい気になるな」だった。
しかし、先ほどのような威勢の良さはなく、声は震えていた。
「誰がいい気になっとるんですか!?」
「…もういい」
小さな声でそう言うと、店長は戻っていった。
ことあるごとにぼくに悪態をついていた店長は、それ以来ぼくを見るとこそこそと逃げていくようになった。
映像キャンペーン、残り1ヶ月になった頃の話である。
話は変るが、2年前に『退職前夜』(2002年9月27日~10月2日)というタイトルの日記を書いたことがある。
その日記にも、ぼくと、その時期の店長とのバトルを書いているが、だいたい今回の店長と同じ展開になっている。
最初、店長から言いたいことを言われるのだが、ぼくはじっと我慢して、いよいよ最後になって、その鬱憤が爆発するというパターンである。
どちらの店長も似たタイプの人間だった。
人前で格好をつけたがり、強がるタイプだ。
大声で人を罵倒するだけならともかく、酷い時には相手を叩いたりもする。
『退職前夜』時の店長などは、腹を手術して退院してきたばかりの人間に、「気に入らん」という理由で、その腹めがけてパンチを入れたことがあった。
聞くところによると、彼らは就職して以来、これと言ってつまずくこともなく順調にその地位まで昇ったということだった。
そのために慢心してしまい、相手の気持ちなんかこれっぽっちも考えられない人間になってしまったのだろう。
そういう人間は、得てして強く見えるものである。
だが、実際はそうではない。
彼らはあまり人からの攻撃を受けたことがない。
またその慢心から、自分に攻撃するような人間はいないと思っている。
だから、そういう風に強気に振る舞うのだ。
そういう人がもし攻撃を受けたらどうなるか。
そう、前述の通り、手も足も出なくなるのだ。
特に今回のぼくのような、それまで守勢に回っていた人間から突然攻撃を受けたのだから、そこに精神的なショックも加わる。
ぼくを見るとこそこそと逃げるようになったのも、そのせいである。
今回のことで、ぼくはそのことを学んだ。
そして、退職時にそれを生かしたのだった。